English関連リンク
  • ホーム
  • 大会概要
  • ニュース
  • チームプロフィール
  • 試合日程・結果
  • 順位表
  • 得点ランキング
  • チケット情報
  • 会場アクセス

ホーム > U20日本代表情報:スペシャルインタビュー第6回

U20日本代表情報:スペシャルインタビュー

スペシャルインタビュー【第6回】

U20スコットランド代表、ジョン・ジェフリー

30代以上のラグビーファンなら、覚えている人も少なくないだろう。
グレート"ホワイトシャーク"こと、ジョン・ジェフリー。
スコットランドでは泣く子も黙る存在であろう、かつての名FLがU20スコットランド代表チームマネージャーとしてU20世界ラグビー選手権(JWC)の事前視察のため来日。現役時代の鋭い出足を彷彿とさせるフットワークで2日間の東京滞在を駆け抜けていった"白鮫"氏に、本大会で日本と対戦することになるU20スコットランド代表の注目選手、準備状況、そして自身の現役時代のことなど、洗いざらい語ってもらった。
スコットランド代表チームマネージャーを務めるジェフリー氏。現役時代はその鋭いプレーぶりから"ホワイトシャーク"の異名で相手から恐れられた

──1987年にオールブラックスと対戦するプレジデントXVの一員としてプレーするため日本に来ていたと記憶しています。

「そのとおりです。そして、今回が2度目の来日となります。ただし、前回のことは、おいしい日本酒をいっぱい飲み過ぎたこともあって、あまり覚えていないのですが‥‥(苦笑)」

──今回の来日目的はJWCの事前視察ということになりますか?

「チームが大会のために来日した時に戸惑わないように、宿泊施設や試合会場、トレーニンググラウンドなどのチェックをしました。本大会中、チームとしての活動をすべてスムーズに進められるようにするのが私の責任ですので。まあ、あらかじめ予想されていたことでもあるのですが、各施設はまったく素晴らしいものでした。
JWCを日本で開催するというのは素晴らしいアイデアだと思っています。この大会で、日本はW杯開催地としてふさわしい場所であることを証明するだろうと思います。それは、私にとっては全く驚くに値しない事実ではありません。個人的には、2011年のW杯開催地に日本が決まらなかったことは、まったく残念なことだと思っているくらいです」

──今季のU20レベルの6カ国対抗で、スコットランドは中々素晴らしい成績を残したようですね。

「今年のチームはとても素晴らしいグループです。6カ国対抗ではアイルランド、イタリア、ウェールズにホームで勝ちました。ジュニアレベルでのスコットランドチームは、このところそれほどいい成績を残してはいなかったので、今年のチームはとてもいい結果を出してきているし、JWCも期待できると思っています。
U20スコットランド代表選手たちにとって、今回のJWCは物凄く大事な大会となります。彼らがプロ選手になるためには、ショートタームで考えたときには、これが最後のアピールの場になる可能性が高い。英国の中でも、スコットランドのクラブチームのレベルは決して高くない。そういう意味でも、たくさんのエージェントやメディアが訪れ、テレビ放映もある今大会は若い選手たちがアピールする場としては、もの凄く重要です。その一方で、私にとってはその方がより重要なのですが、若い選手たちが日本にやってきて、異文化を知るということ。その経験が人間を成長させるということです。たぶん、私は古いタイプの人間なのでしょうが、たとえば95%の人々が、ラグビーの試合をすることに重きを置くとしても、私自身はラグビーを通して、いろいろな人々と知り合い、友だちになり、文化を知る、そのことの方が大事だと考えています」

──すでにJWCのスコッドは決まったのでしょうか。

「最終的な絞り込みはまだです。4月中に一度ミニキャンプとトライアルマッチを行い、スコッドを発表することになります。現在42人リストアップされていて、そこから26人に絞り込むことになります」

──ベーシックなメンバー構成は6カ国対抗時と同じと考えていいですか?

「そうですね。今年の6カ国対抗はここ数年で最もスコットランドが成功を収めた大会となりました。もちろん、コンディションなどの問題もあって、全く同じにはならないでしょうが、6カ国対抗時のメンバーの多くがJWCスコッドにも名を連ねることになるでしょう」

──プロ選手はひとりだけですね。

「LOのリッチー・グレイ。身長は2メートルあり、我々のFWパックの核になる素晴らしい選手です。個人的には、将来のスコットランド代表を背負って立つ選手になっていくことを期待していますし、そうなるでしょう。体が大きいだけではなく、練習の時から常に真剣に取り組んでいて、チームメイトやスタッフからの信頼も厚いですね」

──その他の多くの選手はスコットランド協会のアカデミー所属の選手だとか。

「スコッランド協会にはそれぞれ地域を担当する5人のアカデミーマネージャーがいます。スコッランド内の4地域とイングランド地域を担当するマネージャーの5人です。実際、過去にもイングランド地区に住みながらスコットランド代表になった選手は数えきれないくらいいます。もちろん、彼らはスコットランド代表としての資格を持っているわけですが。
アカデミーは16、17歳のジュニアアカデミーと18~20歳のシニアアカデミーの2段階からなり、シニアメンバーはラグビーの技能面に関して専門コーチから1対1で指導を受けることができますし、ジムプログラムや栄養面でのアドバイス、メディカルサービスなどが受けられます。また、彼らはプロチームと契約できた選手を除いて、12のアマチュアチームからなるスコットランド1部リーグでプレーする。 ちなみに、今回のU20代表はそうした我々のアカデミーの第1期生です。6カ国対抗でいい結果を残せたという事実は、アカデミーがうまく機能している証明ということもできるでしょうし、当然、JWCでもさらなる成果を期待しています」

6カ国対抗(U20)で3勝するなど、充実した戦力を誇る今年のU20スコットランド。「日本、スコットランド、サモア、いずれも2位になれる実力がある」とジェフリー氏(右端)。(4月21日に開かれた「U20世界ラグビー選手権」メディア説明会で)

──キープレーヤーを何人か挙げてください。

「故障から回復すればですが、HOのフレイザー・ブラウン。6カ国対抗の初戦でケガをしてしまいましたが、元々は主将を務めていた選手です。とてもアグレッシブにプレーする選手で、生まれながらのリーダーと言える統率力を持っています。唯一の欠点は何事にも恐れず常に激しくプレーしすぎることくらいでしょうか。それで昨季も今季も負傷してしまった。 そして、伝統的にスコットランドはいいバックローを生み出してきましたが、今回もいいメンバーが揃いました。そして、SHヘンリー・パイグロスもいい動きをします。CTBアシュレー・マカロクは人に強いタイプで1対1で優位に立てる」

──本大会のプールBについてどう考えていますか?

「欧州サッカーの世界でよく使われるフレーズを借りるなら"死のプール"ということができるでしょう。どの国が勝ち上がっていくか、全くわからない厳しいプールということができると思います。もちろん、イングランドがプール戦を勝ち上がっていく可能性の最も高いチームであることは間違いない。その一方で、その他の3カ国はどの国も2位を狙っていることでしょうし、そのチャンスも十分ある。
当然、日本はスコットランド戦をターゲットにしてくるでしょう(苦笑)。それが普通です。もちろん、我々も日本戦のことは物凄く重要に考えている。可能なら、お互い1勝は挙げた上で、グループ2位以上を争うような状況で対戦したいですね」

──少し個人的なことを聞かせてください。選手引退後はどのようにラグビーに携わってきたのでしょうか。

「スコットランド代表は1991年のW杯で引退しました。その後、3、4年はケルソーというローカルクラブでプレーした後は、そこで若手の育成などに携わりました。スコットランド代表のセレクターを務めたり、ヨーロピアン・ラグビー・カップ(ERC)のコミッティーメンバーだったこともあります。ケルソーでコーチを務め、2度ほどスコットランドカップの決勝に勝ち進みました。
でも、本職は農業なので、ラグビーがプロ化してからは、ラグビーのコーチやマネージャーとしては、なかなか携わるのが難しくなっています。この5年間はU21スコットランド代表、そして同U20代表のマネージャーを務めてきました」

──1991年のW杯で日本と対戦した時のことで覚えていることは。

「その2年前、スコットランドは東京で日本に敗れていた。私自身はライオンズツアーのため、その時は来日しなかったのですが、仲間が負けてしまった相手ですし、W杯では真剣に日本を倒すことに集中していました。そして、我々にとって好条件となる準々決勝のスポットを勝ち取るためにも、負けるわけにはいかなかった。
試合に関しては前半の40分間は厳しいものだったと記憶しています。後半は日本が徐々に疲れてきて、点数が離れていった。 とにかく、あの試合に関しては、日本よりもスコットランドの方に勝たなければいけない理由が多かった。地元でのW杯での初戦。2年前に敗れている相手。そして、準々決勝のアドバンテージを獲得すること。そうした要因が重なって、メンタル面で実に充実した状態で日本戦に臨むことができました」

──では、準決勝でイングランドにマレーフィールドで敗れたゲームに関しては。

「あの時の失望は一生引きずっていくことになるのでしょう。我々はラグビーをさせてもらえなかった、というかできなかった。非常に乏しい内容の試合となってしまった。ギャビン(=FBヘイスティングス兄)がゴール正面のPKを外したことを敗因に挙げる人もいますが、そうではない。我々は我々のラグビーができなかった。9-6というとタイトな試合だったと思われるかもしれませんが、そうではなかった。 歴史的に言ってもスコットランドがW杯の決勝の舞台に立つというのは本当にかすかな可能性しかないと思うのですが、91年のW杯がそこに最も近づいた時だった。もちろん、そのこと認識していましたし、だからこそそんな重要な試合で乏しいパフォーマンスしかできなかったことが悔しくて仕方ありませんでした」

91年のW杯では「ラインアウトの一番前でジェフリーに手を上げられてパニックになった」という薫田監督。18年ぶりとなるJWCでの再戦の結果は?(4月21日に開かれた「U20世界ラグビー選手権」メディア説明会で)

──再びJWCに関してですが、U20スコットランド代表は今後はどのような準備を進めていくのでしょうか。

「5月に入ってから2日間のミニキャンプを行い、アイルランドと練習試合してから日本に向かうことになります。選手の多くは学生であり、ちょうど試験の時期と重なることもあって、中々思うような準備期間が取れない事情もあります」

──日本チームに関しては何か情報を持っていますか?

「まだ具体的には何もしていません。ウェールズ遠征のビデオを入手する手はずは整えていますが、研究するのはこれからです。いまはまだ相手のことを考える時期ではない。まず、自分たちが成長することの方が重要です。実際、日本とは3試合目なので、大会中に試合を見て対策を練ることもできます」

──6月の日本の気候はスコットランドには厳しいものになりそうですが。

「そうですね。それも、我々にとって大きなチャレンジになるでしょう。いかに暑さ対策を講じるか、おまけに試合間隔も短い。食事やリカバリーに対する細心の注意が必要になりそうです」

──1989年にスコットランドが日本に敗れた理由のひとつに天候があったのも間違いない。

「実は、いまのU20代表のFWコーチであるピーター・ライトは89年に来ていたメンバーのひとりです。ですので、彼は日本の暑さをよく知っている。だから、彼の日本に対するイメージはあまり良くない。いや、ラグビー以外では随分いい思いもしたようですが‥‥(苦笑)。ともかく、彼の体験も生かしながら、万全な暑さ対策を講じたいですね」

──6カ国対抗で対戦したイングランドU20の印象を教えてください。

「正直言って、とても強い。もちろん、サイズが大きく、とてもフィジカルなチームですが、その一方で今年のイングランドU20はラグビーをするということです。6カ国対抗ではフランスに敗れたのですが、敗因はラグビーをし過ぎたということに尽きるのではないかと思います。個人的にも、あんなにパスを回して攻めるイングランドチームは初めて見ました。
彼らの多くはプレミアシップでプレーしている。そして、層も厚い。6カ国対抗の時もイングランドは計37人の選手を使っているはずです。それは、クラブ側が離さなかったり、チームマネージメント側がいろんな選手を試したいという事情もあって、6カ国対抗時のイングランドは決してベストチームではなかった。それが、JWCでは間違いなくベストチームでやってくる。もし、イングランドが決勝に残らなかったとしたら、私自身とても驚くだろうと言っておきましょう」

──JWCではどんなラグビーを日本のファンの前で見せたいですか?

「できたら6カ国対抗のアイルランド戦とウェールズ戦を再現するような試合をしたいですね。スキルとパッションと激しさがミックスされたような、古き良きスコットランドラグビー。今年のチームは、古き良きスコットランドの情熱があり、メンタル的にも強いものを持っているし、アグレッシブにもプレーできる。そんな資質をひとりひとりが持っている。とてもスコットランドらしいラグビーを見せながら、6カ国対抗では結果も伴った。彼らのことを誇りに思っています。
世界ラグビーの中で我々は決してサイズに恵まれている訳ではありません。そのため、いつも正面からパワーでぶつかっていっても勝つことは難しい。我々としては常に速さで勝負できるような展開に持ち込もうと考えています。ただし、ただワイドに展開してもDFシステムが確立されているモダンラグビーでは、勝機は見出せない。展開する前のインパクトも必要になってくる。そういう意味で、いまのU20代表が目指しているのは、強烈なインパクトとスピードを兼ね備えながら、ボールを使ってラグビーをプレーするチームです。
私自身、選手が積極的に攻めようとして起こったミスは非難しません。選手にラグビーをプレーさせることが一番重要なことだと信じているので。 とにかく速くて、激しいラグビーをしてほしい。そして、観客を喜ばせることができて、勝利を収めることもできたら最高です」

「実は今でも私は私自身が生まれた家に住んでいるんです。50年間ずっとです。今もフルタイムの農家です。ラグビーに関しては、U20チーム以外に地元クラブやバーバリアンズに携わっています。ただ、U20代表のスケジュールがどんどん厳しくなってきているので、ビジネスと両立させることは難しく、今年の JWCがチームマネージャーとして携わる最後の大会となります。毎年、6カ国対抗がありJWCもある。もう、アマチュアがパートタイムとして携われる範囲を超えてしまっているので、今年で終わりにすることに決めました。日本でU20スコットランド代表が素晴らしいラグビーを見せて、有終の美としたいですね」

インタビュアー:出村謙知

PAGE TOP