U20イングランド代表 43-0 U20日本代表
(予選プール 第1戦/2009年6月5日(金) at東京・秩父宮ラグビー場)
イングランド、雨の秩父宮で日本を完封
日本の初戦の相手は、この大会で優勝を狙うイングランド。2015年ワールドカップ本大会開催を目指すイングランドは、U20の強化も確実に進んでおり、来日したメンバーはもちろんオールプロ、そのうち16人が今季のプレミアシップに出場した選手たち。対する日本は全員がアマチュアの大学生だが、やはり本大会の招致のために12位以上の獲得が期待され強化を続けてきた。
あいにくの雨にもかかわらず、秩父宮には9000人以上のラグビーファンが駆けつけ、19時にプールBの第2試合がキックオフ。
今回のイングランドは「優勝」という絶対の目標のもと、チームとしての戦い方に強い規律を感じさせるチーム。レスタータイガースで活躍するSHベンジャミンを中心に長身のロック、バックロー陣が縦横無尽にランナーとして飛び込んでくる。BKはSOローリーにCTBのアングルチェンジで仕掛けながら、2次、3次でのFWのランナーと連携する。15人の無駄の無い動きとチームとしての統一感は、とてもU20のチームとは思えない完成度を感じさせる。
これに対し前半の日本チームの激しい闘志はイングランドを苦しめた。セットスクラムではHO有田を中心に前でしっかりとヒットし、8人が固いパックで対抗する。ラックサイドのディフェンス(DF)でも、FWが揃って前に飛び出しイングランドの足元に突き刺さる。BKではハベアのビッグタックルが炸裂し、開始から14分は全く互角の立ち上がりとなった。
このこう着状態をブレイクしたのは、やはりSHベンジャミン。ペナルティから素早く密集を突き破り、サポートしたFWがつないでロングゲイン。このラックの球出しに日本DFがついていけず、空いた右サイドをFLジョシュアが駆け抜け初トライ。続く24分には連続で確保したラックに複数のランナーがしかけ、日本DFが中に寄ったところをFLクリストファーが突破。ラックサイドのFWとBKとのギャップを的確に狙った見事なランニング。そして、34分にはBKがセットアタックからムーヴを見せる。SOローリーが横へ走り、そこへCTBルークがアングルチェンジ(ランギ)。この際、スクラムでは左サイドがアップして日本のFL、No8を後ろに下げてDFを遅らせるなど、チームスキルの高さを感じさせる。
イングランドBKのラインの浅さと思い切ったアングルは、日本のタテに深く位置するSOのポジショニングと対比させるものがあり、雨でハンドリングが難しいゲームの中、ボールキャリアがFWの前へ出る、というゲームプランが忠実に実行された。(前半24-0)
後半のイングランドは開始直後にレッドカード、18分にはイエローが出され13人での時間を過ごすことになる。日本は11分に期待のSH滑川を投入。一気にここでテンポを上げたいところだが、アタックでのミスも続き得点ができない。DFが続き疲れの見えた日本に対し、イングランドは後半も3トライを上げ、計6トライでの完封となった。(後半19-0)
日本のこの日の課題はBKのゲームメイクとアタック力。FWが前でボールを獲得しても再三停滞を繰り返し、ゲームのテンポを変えられなかった。早い球出しから低い弾道のキックで相手WTBの背後を狙ったり、パスで外側のスペースを狙うなど相手DFを崩す手立ては見せずに終わった。
試合後、薫田監督は「経験の差」を課題とし、岩渕アシスタントマネージャーは「彼らをここから育てたい」と語った。確かにプロと大学生においては日々の練習、ゲームの厳しさにおいて大きな距離があるだろう。スタンドのファンもこの現状を目の当たりにし、力の差を認めた。しかし、監督も選手たちも少しもうつむいてはいなかった。全ては次ぎのサモア戦のために準備を続けてきたのだから。
プレミアシップとの戦いの厳しさを知った日本チームは、さらに強い意思で残り2戦に挑むはずだ。彼らの一つのタックル、一つのヒットに熱い声援をスタンドから送り、日本代表とスタンドが一体となって戦うときが来ている。日本ラグビーの上位進出への願いをスタンドのファンが選手一人ひとりに託し、ともに戦うときだ。
なぜなら、これがまさに国と国が誇りをかけて戦う、日本が待ち望むワールドカップなのだから。(照沼 康彦)
|